コロナが治癒しても高齢者の方は全然家に帰れてないという現実をお話しよう。

 

どこもかしこも飽きもせずコロナコロナですね。かなり悪い意味で旬な話題なのでコロナネタはこの先も当分トレンドから外れることはないのだろう。悲しい限りだけれど。しかし現実はそんなもんだ。私は折角?医療現場で働き、コロナの患者さま(コロナ治癒後だけだけど)に携わらせていただいているので、そんな医療現場についてご紹介していきたい。

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 コロナ後の患者さんってどんな患者さんなの?

一般的にコロナ後の患者さまは急性期病院(医療センターなどの大きい病院)にて治療し、その後のPCR検査にて陰性確認された方、あるいは陽性であっても発症から10日以上たちコロナの症状がないという国の定める退院規定を満たしている方のことを言う。

私の働く病院は慢性期に病院なのでもちろんエクモなんていう高度医療機器もなければ、ステロイドの微妙な調整のできる専門医もいない。ということからコロナ治療は不可なわけだが、急性期病院からのコロナ後の患者さんの転院以来は後を絶たない。酸素をしてるから、ADL(身体の機能)が低下したからリハビリが必要などが主な転院理由だ。

 

コロナ渦における慢性期(回復期)病院の役割とは

  • コロナ後の患者さんのリハビリを行うこと
  • 患者さんの次の生活の場の調整を行うこと

上記2つが主な役割だと私は理解している。 コロナ感染前は自宅にて完全自立で生活されていた高齢者の方がコロナに感染し、酸素は取れないしADLは低下するしでどうしようもない状態になっているパターンが圧倒的多数だ。急性期病院は次の生活の場の調整まではしてくれない。治療の必要な患者さんのためにベッドを空けることに四苦八苦しているからだ。

慢性期の病院はコロナ治療はできないが、次の生活の場を調整をすることはできる。なぜ慢性期の病院はそういう調整ができるのかというと、急性期病院と比べると入院期間が長く設定されているからだ。急性期病院はどんなに長くても1ヶ月ぐらいしかいれないような気がする。まして治療終了となればソッコー退院調整だ。そんな急性期病院では施設の調整なんて時間的配分からまず無理だろう。

しかし慢性期病院でもコロナ後の患者さんの退院調整は難航することも多々ある。

 

慢性期病院におけるコロナ患者さんの退院調整が難しいワケ

困難を極める代表例としてはコロナにかかった患者さんがコロナ感染前は完全自立だったため、介護保険も未申請だがコロナに感染し家には帰れないという場合だ。介護保険は65歳以上の方に関しては市役所より自動的に送付される。しかし介護保険は申請し介護認定を受けないとまともに使用することができない。要支援や要介護度がついて初めて使えるようになるのだ。そして介護度をつけてもらうには、市役所の方が認定調査に来る。そういう手続きを含め介護度が下りるのは1ヶ月ほどかかってしまうのだ。介護保険の認定を待ちながら、次の生活の場(自宅or施設)の調整を同時進行で行っていくのだ。

まず、この仕組みや施設入所までの流れを知らない人が圧倒的だ。ちなみに、介護保険生活保護を受給している方でも申請できる。というか申請しないと介護保険を使うことはできないので、生活保護受給中で介護保険が使用できるかわからない!と不安になっている人は市役所に一度駆け込んで欲しい。

コロナになるまで介護の「か」の字もなかったという方は十中八九この沼にはまっている。「知らない」ということは悪いことではないが、国から受け取ることのできる公的な保証について知らないと必ず損をする。わからな場合は、市役所に電話でも良いので聞きましょう。自分で判断しない、ということをオススメする。

つまり結論はというと。慢性期病院での退院が手こずるのは介護保険を申請していないとかなり退院調整に時間がかかるというところにある。私の働く病院も入院期限があるのでずっと次の生活の場の調整がつくまで入院継続をすることはできない。そんな時どこで本人さんは生活されるのか?という大きな問題が立ちはだかるのだ。

 

行き場のない患者さんはどうなるの?

家には帰れない、施設にもすぐには入所できない、今入院している病院は出ていかなければならない。こんな三重苦に陥った時にとる手段はただ一つ。転院一択だ。

施設は空きがなくて入所するのに時間がかかる場合がある。そんな時も転院をお願いしたいりする。特養(特別養護老人ホーム)の入所待ちで私の病院に転院されてくる方も中にはいる。何か病気の治療目的ではないので社会的入院に近くなるのだけれど。そうやって次の生活の場が整うまで病院を転々とするしかないのだ。こういった方のことを業界では「制度の狭間に落ちた人」と表現する。さらに治療が必要なわけではないので、受け入れてくれる病院が多々あるわけでもないのが厳しい現実に追い討ちをかけているのだ。

病院スタッフが高齢者の家族がいる方にお願いしたいこと

コロナ後の方であろうとなかろうと、身内に高齢者の方がいる場合は使わないとしても介護保険の認定は受けておいて欲しいと思う。どれだけ健康であったとしても現実は恐ろしい流行り病で充満しているわけだし、そもそも高齢者は様々な病気のリスクを抱えているのだ。備あれば憂なしだ。誰にでもリスクは平等にあるので、賢く国の公的な保証を駆使してもらいたい。わからないことがあればネットで調べるも良しだし、市役所に走るのも良しだ。大切な情報をきちんとした出所から仕入れて、損をしたり、はたまた自分や家族が困らなようにしてもらいたい。

本日はここまで。