迫りくる老老介護の現実

 

拝啓この世界のみなさま、お元気ですか。私は元気です。

 

私はこの世界に生を受けてからこの方一度も「世界を変えたい」なんて大きな夢を抱いたことは一度たりともありません。ただただこの世の流れに身を任せて楽に生きてまいりました。

しかし一度病院で働くようになり、この世界、こと日本において何と高齢者の多いことか、という現実を身をもって体感している所存であるのです。

 

ええ、日本は超高齢社会と言われています。それは日本の現首相を見れば日本の高齢化の加速度というのは伺いしれることでしょう。しかし日本人、特に私を含めた若い民衆は政治への興味は大してないように思います。だから高齢化問題について熱く語り合う若者も見たことがなければ、私も友人とその手の話をしたことがありません。

単に超高齢化社会がどうなるのか、いまいちピンとこないからなのかもしれませんが、歴史的に見てもここまで平均寿命が伸び、高齢者が溢れる世界線というのは史上初のことなのではないでしょうか。もしそうであるならば、右も左もいくべき道がわからず、現実逃避したくなる日本人の気持ちというのは真っ当なものになり得る、と考えるのは些か暴力的かもしれませんね。

 

お察しの通り、病院には高齢者が溢れています。高齢者の一つのコミュニティとなっているのは否めないかと思っております。しかしそれは問題ではありません。ここで想像力を働かせて頂きたいのが、高齢者の家族はこれまた高齢者なのです。

病院には90オーバーの方も多々いらっしゃいます。90歳の患者様の家族さんはいくつでしょうか?なんとも簡単ななぞなぞです。

そうです、その方のお子さんであったとしても70歳は軽く超えてくるでしょう。

そんな70歳のオジィちゃんがこれまた90歳を超えた自身のお母さまを介護している・・・。というのはありふれた日常になっている、それが今の日本なのです。

 

「施設に入れたらいいじゃないか!」というお声がたくさん上がってきそうですね。

はい、その通りです。しかし介護保険が使えるとしても、施設に入るというのは一定の収入や蓄えがなければたちまち困難になります。1ヶ月、2ヶ月の話ではないからです。その方の一生が終わるまで、入り続けることになります。それまで払い続けることが可能な方が果たして何人いることやら・・・。考えただけで恐ろしいです。

病院にもいられない、施設に入るのも金銭的に難しい・・・。そんな方は一体どこへ行けば良いのでしょう?

みなさまにこの難問が解けるでしょうか。はたまた、この問題を解決するためにはどのような政策が必要になるとお考えでしょうか。そもそも、これは解決すべき問題なのでしょうか。見て見ぬふりをし、高齢者の叫びを無視したことさえ無視して終わりの見えない歴史の流れの中にただ漂っていれば良いのでしょうか・・・?

病院で働くと、日本の問題が浮き彫りになるようでなかなかに考察の余地が広くあるなと、知的好奇心が刺激されます。しかし考察したとはいえ、私自身にはなんとかしようと国に働きかける元気もなければ情熱も不在なわけで。 ただただ日本という国で今後過ごしていくにあたり、漠然とした不安から最悪のシナリオをせっせと作成し、悲劇的な終焉で日本を終わらせる妄想に明け暮れるしかないのです。

なんと非生産的で不毛なことでしょうか。この自分の無能さにもう耐えられない!

 

では、お酒とハンバーガーに溺れ、逃げるとしましょうか。

お酒もハンバーガーもこの日本を救ってはくれません。それはわかっています。

しかしこれらは私のこのしみったれた心と荒廃しきった脳内回路を甘く優しく、痺れさせてくれるのです。

高齢者も高齢者だらけのこの日本も、いつか世界から必要とされなくなり日がくることでしょう。それは悲しいことかもしれませんが、歴史上そうだったので例外はないでしょう。しかしどれだけ時が経ったとしても、ハンバーガーとお酒は変わらずに後の人々の心に寄り添ってくれる存在であるよう祈り続けたいものです。

 

かしこ 

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